RESEARCH NOTE / AFFECTIONATE TOUCH
スキンシップの好みが合わないと、関係は悪くなるのか
恋人とのスキンシップの好みが違うことだけで、関係の良し悪しや愛情の有無は決まりません。2025年の研究では、触れ合いへの平均的な心地よさと関係のウェルビーイングに関連がありましたが、「二人の差」は本人の認知とカップル双方の回答で結果がそろいませんでした。私的な場面と公的な場面も分けて読みます。
初出:2026-09-28 | 最終確認:2026-09-29 | 編集主体:データドキュメンタリー編集部
先に答え
- スキンシップの好みの違いは、関係がうまくいっていないことや、相手の愛情がないことを単独で示す指標ではありません。
- Sgambati ら(2025)は、交際中の1,832人の回答と、両者が回答した86組のカップルを別々に分析しました。触れ合いへの心地よさと関係のウェルビーイングは関連しましたが、二人の差の結果は測り方で変わりました。
- 私的な場面の心地よさは、公的な場面より関係のウェルビーイングと強く関連しました。ただし、横断的な自己報告研究なので、触れ合いが関係を良くするという因果は示していません。
- Fortier ら(2026)は、触れ合いの種類ごとに仮想場面で予想する反応を調べました。現実のタッチや回復効果を測った研究ではありません。
研究でいう「スキンシップの好み」
この研究が測ったのは、手をつなぐなどの愛情を示す身体的な触れ合い(affection-sharing)に対する心地よさです。「週に何回触れ合うか」や、性的な欲求・性行為の回数を数えた研究ではありません。
また「私的」は本人とパートナーだけの場面、「公的」は他の人がいる場面です。二人きりなら心地よいが、人前ではためらうという違いも、同じ尺度の中で分けて扱われています。
1,832人の回答と、86組のカップル回答
論文は、2019年に実施したオンライン自己報告調査のデータを、個人回答の分析とカップル双方の回答がそろった分析に分けています。サンプル数を足して「1,918人」と読むことはできません。二つは別の分析用データセットで、片方は1,832人、もう片方は86組です。
| 分析 | 誰の回答か | 相手の心地よさをどう測ったか |
|---|---|---|
| 個人データ | 交際中の参加者1,832人 | 自分の回答と、本人が思うパートナーの回答 |
| カップルデータ | 双方が回答した86組 | 各自の回答を照合した相手の実回答 |
いずれもオンライン質問紙による同時点の自己報告です。個人分析は規模が大きい一方、パートナー本人の実回答と照らし合わせた分析は86組に限られます。
見つかった関連は、差の捉え方で変わる
| 研究上の問い | 報告された結果 | 読み取りの境界 |
|---|---|---|
| 二人の平均的な心地よさ | 本人が「二人とも触れ合いに心地よさを感じている」と捉えるほど、関係のウェルビーイングも高い傾向。関連は公的な場面より私的な場面で強かった。 | 関係が良いから触れ合いも心地よい、あるいは別の要因が両方に関わる可能性を分けられない。 |
| 本人が感じる二人の差 | 本人が差を大きく感じるほど、関係のウェルビーイングは低い傾向。平均的な心地よさなどを同時に考慮すると、公的な場面での差は関連が残り、私的な場面では残らなかった。 | 「相手もそう思っている」と確認した結果ではない。本人の認知と関係評価が同じ人の回答から作られている。 |
| 両者の実回答の差 | 86組のカップル分析では、本人が感じた差と同じ形で結果がそろわなかった。私的な場面の差は、平均的な心地よさを統制したモデルで小さな正の係数へ反転した。 | この反転について著者らは、効果の小ささと限られた検出力から慎重な解釈を促し、偽陽性の可能性にも触れている。 |
ここから「感じているズレのほうが実際のズレより重要」と結論づけることはできません。個人回答とカップル回答はサンプル数も分析方法も異なり、86組の分析は小さな効果を見落とす可能性があります。有意かどうかだけを比べても、二つの関係の強さが違うとは証明できません。
人前での触れ合いは、社会的な環境も受ける
論文では、同性カップルの参加者は、異性カップルの参加者より公的な場面での触れ合いに低い心地よさを報告しました。著者らは、周囲の視線や社会的安全性への警戒などを背景として挙げています。これは同性カップル固有の性格や、愛情の弱さを示す結果ではありません。
研究にはジェンダー多様な関係の参加者を十分な人数で含められず、個別の分析対象から除かれました。そのため、この論文だけで多様な関係の経験全体を代表させることはできません。
別の研究デザインが調べたこと
Jakubiak ら(2023)は、既婚カップルの日誌研究と、事前登録された実験を行いました。ある日の愛情を示す触れ合いは、その日や翌日の共有する肯定的な活動と関連しました。実験では、短い触れ合い課題の直後に本人が報告した共有活動は増えましたが、観察者が評価した活動には同じ直後効果がありませんでした。翌週までの増加は、普段あまり共有活動をしない人に限って確認されています。
この研究は、触れ合いへの好みが二人で一致するかを測ったものではありません。結果も、触れ合いが長期的な関係満足度を高めると確定したものではありません。研究ごとに対象の問いと測定結果を分けて読む必要があります。
過去の経験と、触れ合いへの予想
内容について:この節は子どもの頃の性被害を扱う研究に触れます。被害の詳細描写はありません。
Fortier ら(2026)は、SNS広告などから募集した主にカナダ在住の同居カップル363組(695人、うち332組は双方が回答)を対象に、愛情を示す触れ合い・性的な触れ合い・接触なしの仮想場面を提示しました。横断的な自己報告から、子どもの頃の性被害経験の頻度と、本人およびパートナーが予想する反応との関連を調べています。
経験頻度が高いほど、仮想的な性的接触場面で否定的な感情や回避を予想する関連があり、愛情を示す触れ合いの場面では回避の予想が低い関連がありました。報告された効果は小さく、実際の接触中の反応を観察した研究ではありません。
接触なしの場面では、経験頻度が高い本人ほど否定的な感情を予想し、男性参加者では相手の性的意図を高く捉える関連がありました。パートナーの予想反応にも関連が報告されました。場面ごとに関連の方向は異なります。
この結果から、特定の人の気持ち・同意・希望を推測したり、愛情を示す触れ合いを勧めたりはできません。触れ合いは本人のその時点の意思と境界を尊重する必要があります。性暴力や安全に関する公的な相談先は相談・支援ガイドで確認できます。
この研究から分からないこと
- 触れ合いの好みが違えば、関係が悪い・愛情がない、という診断はできません。
- 触れ合いを増やせば関係が改善する、あるいは相手が望んでいる、とも言えません。触れ合いは、相手がその場で望んでいることが前提です。
- 研究の結果は、すべての文化・年齢・関係形態や、日本のカップルの平均値を示すものではありません。
この論文の値は、関係の状態を判定するチェックリストではなく、触れ合いの「種類・場面・本人の認知・相手の実回答」が別の問いだと知るための研究結果です。
一次資料
- Sgambati, S., Holmberg, D., & Blair, K. L. (2025). “In Sync? Assessing Partners’ Similarities in Comfort With Physical Affection-Sharing as a Predictor of Relationship Well-Being.” Personal Relationships, 32(4), e70041. 出版社の公開論文(DOI)
- Jakubiak, B. K., Fuentes, J. D., & Feeney, B. C. (2023). “Affectionate Touch Promotes Shared Positive Activities.” Personality and Social Psychology Bulletin, 49(6), 939–954. PubMed抄録 / 出版社の論文(DOI)
- Fortier, C., Charbonneau-Lefebvre, V., Gewirtz-Meydan, A., Rosen, N. O., Daspe, M.-È., & Vaillancourt-Morel, M.-P. (2026). “Childhood Sexual Abuse and Cognitive, Affective, and Behavioral Responses to Partner Touch.” Journal of Marriage and Family, 88(1), 50–66. First published 2025. 出版社の公開論文(DOI)
確認日:2026-09-29。Sgambati らとFortier らの出版社掲載情報・DOI、Jakubiak らのPubMed・DOI書誌記録を確認。いずれも日本を対象とした研究ではありません。