RESEARCH NOTE / SEXUAL BOREDOM
性行為のマンネリは、関係全体の倦怠と同じなのか
同じとは限りません。性行為そのものの単調さと、関係全体の停滞感は重なり得ますが、研究では異なる問いとして扱われます。2026年の調査と性的退屈の測定研究から、回数・欲求差・関係の退屈を分けて読みます。
初出:2026-09-28 | 最終確認:2026-09-28 | 編集主体:データドキュメンタリー編集部
先に答え
- 性行為のマンネリと関係全体の退屈は関係し得ますが、同じ尺度や結論ではありません。
- 2025年公表の性的退屈の尺度研究は、過去1か月の経験を振り返る一時的・文脈依存の状態として測定しました。個人の性格や関係全体の診断ではありません。
- 2026年の調査では参加者のおよそ4分の1が現在の関係に退屈を感じると報告しましたが、その割合を日本のカップル全体へ当てはめたり、退屈の原因や解消法の効果とみなしたりはできません。
似た言葉でも、測っているものが違う
| 問い | 研究上の対象 | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 性行為の退屈 | 性的な経験を単調、機械的、つながりに乏しいと感じる状態。尺度研究では過去1か月を振り返る。 | 関係全体が退屈か、性欲が低いか、行為の頻度が少ないか。 |
| 関係全体の退屈 | 二人の関係に停滞感や刺激の乏しさを感じる経験。性以外の生活要因や感情的なつながりも含み得る。 | 性行為に退屈しているか、関係が破綻しているか。 |
| 性行為の頻度 | 一定期間に何回あったかという回数。 | 本人が満足しているか、退屈しているか、増やしたいか。 |
| 欲求ギャップ | 本人の希望と実際、または二人の欲求の違い。 | 差の理由が退屈かどうか、関係の状態や同意。 |
頻度や欲求差の数字を見ても、性行為をどう感じているかまでは測れません。自分や相手を一つのラベルで判断する材料にもなりません。
2026年調査で参加者が語った関係の退屈
de Oliveira、Kerner、Mark(2026)は、恋愛関係にある成人3,089人の調査と、そのうち401人の自由回答を分析しました。著者の抄録では、参加者のおよそ4分の1が現在の関係に退屈を感じると報告し、自由回答のテーマとして次の要素を挙げています。
| テーマの分類 | 参加者が挙げた内容 | 解釈の限界 |
|---|---|---|
| 保護に関わる要素 | 共有する経験、感情的なつながり、自律性 | 退屈を防ぐ因果効果が実験で示されたわけではない。 |
| 関係する要素 | 停滞や単調さ、性の健康、パートナー・関係の問題、生活上のストレス | どれか一つが全員の原因だとは言えない。 |
| 対処として語られたこと | 互いの努力、つながりや相互性、新しさや探索 | 自由回答で挙がった行動は、誰にでも有効な介入の証明ではない。 |
| 結果として語られたこと | 否定的な感情、不貞、関係の終了 | その後を追跡して発生を予測した結果ではない。 |
著者らは、参加者が関係の退屈を通常起こり得る周期的な経験として語った点も報告しています。これは回答者の説明であり、すべての関係に当てはまる法則や、悩みを我慢すべきという意味ではありません。
性的退屈は「性格」ではなく、最近の状態として測る研究もある
de Oliveira ら(2025)のSexual Boredom Inventory(SBI)は、性行為の退屈を一時的・状況依存の経験として捉える6項目の尺度です。英語で回答した米国居住者2,555人を対象に、過去1か月の性的経験を振り返ってもらい、尺度の初期的な構成と妥当性を調べました。
尺度の得点は性の喜びやウェルビーイングと負に関連しましたが、これは原因の向きや改善策を示しません。尺度研究は、個人に病名を付けたり、関係の健全性を判定したりする診断基準ではありません。
先行する2021年の系統的レビューは、2020年8月までの43論文を整理し、性的退屈の扱いが個人・関係・社会の要素にまたがる一方、統一された定義や理論が定まっていないと報告しました。2025年の尺度も初期検証であり、分野全体に共通する確定基準とまでは言えません。
研究から決めつけられないこと
- マンネリを感じたからといって、愛情がない、関係が終わる、どちらかに問題があるとは判定できません。
- 頻度を増やす、新しい行為を試す、関係を続けるといった行動を、研究結果から相手へ勧めることはできません。性行為は双方がその場で望んでいることが前提です。
- 3,089人調査や尺度開発の結果は、日本の代表値でも、すべての年齢・文化・関係形態に共通する基準でもありません。
退屈、性欲、頻度、関係満足度は関連しても別の問いです。本人が何に困っているのかを分けることが、研究を読み違えない出発点になります。
原典
- de Oliveira, L., Kerner, I., & Mark, K. P. (2026). “Understanding Relationship Boredom: A Thematic Analysis of Its Dimensions and Links to Sexual Boredom.” The Journal of Sex Research, online ahead of print. PubMed抄録 / DOI
- de Oliveira, L., Rham-Knigge, R., Ford, J., Coleman, E., & Mark, K. (2025). “Sexual Boredom Inventory (SBI): Development and Initial Validation.” Journal of Sex & Marital Therapy, 51(1), 74–84. PubMed / PMC公開本文 / DOI
- de Oliveira, L., Carvalho, J., & Nobre, P. (2021). “A Systematic Review on Sexual Boredom.” The Journal of Sexual Medicine, 18(3), 565–581. PubMed抄録 / DOI
確認日:2026-09-28。研究デザイン、抄録に記載された対象・測定・限界を確認。いずれも日本のカップルの代表値を示す研究ではありません。