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日本のセックスレス率を、定義と調査対象から読む
「日本のセックスレス率」は一つの数字ではありません。何をセックスレスと呼ぶか、誰にいつ尋ねたか、抽出方法は何かによって、同じ日本の調査でも意味が変わります。
初出:2026-08-12 | 最終確認:2026-08-15 | 編集主体:データドキュメンタリー編集部
先に結論
- 日本性科学会の2024年更新定義は、特別な事情がないのに、カップルの合意した性交やセクシャル・コンタクトがいずれも1か月以上なく、その後も長期化が予想される場合です。これは臨床・専門団体による定義で、国民全体の有病率を直接示すものではありません。
- IPSS第16回出生動向基本調査(2021年)は、妻50歳未満の初婚どうしの夫婦について、過去1か月に性交がないケースを「セックスレス」と置くと約6割になると報告しています。妻50歳未満の夫婦全体で過去1か月に性交があった割合は37.9%でした。
- JFPAの「第9回 男女の生活と意識に関する調査」は、2023年に16–49歳の3,000人を対象に、住民基本台帳から無作為抽出し、郵送またはインターネットで回答する設計でした。公式の結果概要は、婚姻関係にある男女の48.3%が1か月以上セックスをしていないと報告しています。
- JFPAの「ジャパン・セックス・サーベイ2024」は、18–69歳の5,029人を対象に、2023年11月にインターネット調査を実施し、都道府県人口構成に合わせたウエイトバックを行いました。同ページは、1か月以上セックスがない割合を男女とも6割以上と要約しています。
- 相模ゴム工業「ニッポンのセックス2026」は、2025年12月初旬に47都道府県の20〜60代男女、セックス経験者14,312人へインターネット調査を実施しました。「パートナーとの関係がセックスレスだと思うか」という自己認識を測る調査で、IPSS・JFPAの割合と同じ指標へ置き換えません。
- これらは、定義・年齢・婚姻条件・抽出方法・回答方法が違います。数字を足したり、一直線の時系列として比較したりはできません。
まず「セックスレス」の定義
1か月以上ないという基準に当てはまっても、双方が納得していて苦痛がないケースと、頻度や接触の差に悩んでいるケースは同じではありません。逆に、定義上の期間に届かなくても、本人やカップルが困っていることはあります。
日本性科学会の定義は、性交だけでなく「セクシャル・コンタクト」も含み、特殊な事情の有無と、その後も長期にわたる見込みを条件にしています。一方、調査では質問票の回答選択肢や集計単位の都合から、「過去1か月に性交があったか」のような測定になる場合があります。両者は似ていますが、同じ質問ではありません。
調査を横に並べる
| 資料 | 対象・方法 | 期間・定義 | 確認できる結果 |
|---|---|---|---|
| 日本性科学会 2024年更新 | 専門団体の定義。国民調査の標本ではない。 | 特別な事情なし。合意した性交やセクシャル・コンタクトがいずれも1か月以上なく、長期化が予想される。 | 定義の基準。割合を示す調査結果ではない。 |
| IPSS 第16回 出生動向基本調査 | 2021年6月。全国1,000調査区から無作為抽出。調査対象は18歳以上55歳未満の独身者と、妻55歳未満の夫婦(回答者は妻)。夫婦調査の有効票6,834票。 | 問12で「過去1か月以内の性交渉の有無」を質問。報告書の該当集計は妻50歳未満の夫婦を中心に、妻の年齢別に集計。 | 妻50歳未満の夫婦で、過去1か月に性交があった割合37.9%。本文要約では妻20代は6割超、30代前半は5割未満。初婚どうしでは、ないケースが約6割。 |
| JFPA 第9回 男女の生活と意識 | 2023年9月。全国16–49歳の3,000人。住民基本台帳から統計的に無作為抽出し、郵送で案内。回答はインターネットまたは郵送。 | 結果概要は婚姻関係にある男女の「1か月以上セックスをしていない」割合を示す。 | 公式の結果概要は48.3%。公開ページで確認できる結果概要の範囲であり、JSS2024やIPSSと同じ標本・設問・集計ではない。 |
| JFPA JSS2024 | 18–69歳の男女5,029人。2023年11月14–17日のインターネット調査。都道府県人口構成に合わせてウエイトバック。 | 1か月以上セックスがない割合、および1年以上性交渉がない割合を掲載。 | 公式発表の要約では、1か月以上ない割合は男女とも6割以上。1年以上ない割合は男性45.3%、女性52.8%。 |
| 相模ゴム工業 ニッポンのセックス2026 | 2025年12月初旬。47都道府県の20〜60代男女、本調査14,312人(セックス経験者のみ)。インターネット調査、性年代均等割付(一部セル不足)。 | 「パートナー(結婚・交際相手)との関係がセックスレスだと思うか」という自己認識。専門団体の定義や、IPSS・JFPAの「過去1か月/1か月以上」と同じ測定ではない。 | 男性の約6割、女性の約半分が「セックスレスだと思う」と回答。自己認識と回答した頻度のクロスも報告されている。 |
出典ページの表現を要約したものです。IPSSの「約6割」は、妻50歳未満・初婚どうしの夫婦という集計条件に限ります。JFPA第9回の48.3%は公式結果概要の値、JSS2024の「6割以上」は公式発表ページの要約値です。相模ゴム工業の2026年調査は自己認識型のインターネット調査で、いずれも同じ標本・質問設計・集計条件ではありません。
2026年の自己認識型調査を別枠で読む
相模ゴム工業の特集は、頻度の有無だけでなく、「自分がセックスレスだと思うか」と回答した人の認識を尋ねています。同社の掲載結果では、自己認識で「セックスレスだと思う」群のうち、1か月に1回以上と回答した人は13.6%、思わない群では62.2%でした。
これは、自己認識と回答した頻度が完全には一致しないことを示す同一調査内のクロスです。専門団体の定義、IPSSの夫婦票、JFPAの調査が測った割合を更新する数字ではありません。調査の全体像は「ニッポンのセックス2026」公式ページ、セックスレス特集のクロスは公式の特集ページで確認できます。
相模ゴム工業はコンドームメーカーで、本調査はセックス経験者のみを対象にしたインターネット調査です。性年代均等割付(一部セル不足)という設計も含め、国民全体の代表値や、IPSS・JFPAとの時系列比較として扱わないでください。
IPSSの設問と年齢別表を確認する
IPSSの夫婦票では、性交の回数や希望頻度ではなく、まず直近1か月に性交渉が「あった/なかった」を尋ねています。設問12の見出しは次のとおりです。
「あなた方ご夫婦の過去1か月以内の性交渉の有無と避妊についておたずねします。」
| 確認点 | この調査で確認できること | この調査だけでは言えないこと |
|---|---|---|
| 質問の入口 | 過去1か月以内の夫婦間の性交渉の有無。回答は「あった」「なかった」に分かれます。 | 1か月間の回数、欲求の強さ、欲求の差、苦痛、性交以外のセクシャル・コンタクトまでは測っていません。 |
| 年齢軸 | 公開図表8-1-1は「妻の年齢別」。総数と、追加出生予定がある夫婦の集計を並べています。 | 男女別の成人全体の割合や、夫の年齢別の割合として読むことはできません。 |
| 抽出対象と結果表 | 公式概要の調査対象は妻55歳未満の夫婦。図表8-1-1の本文要約は妻50歳未満の夫婦について説明しています。 | 「日本の全カップル」や「日本の全成人」の代表値と短縮して紹介することはできません。 |
| 公式データ | グラフデータの図表8-1-1から、年齢別CSVの所在を確認できます。本文の該当章は報告書第Ⅱ部です。 | このページではCSVを再集計した新しい数字を作らず、公式本文の要約と表番号を案内しています。 |
設問票そのものはIPSSの第16回夫婦票PDFで確認できます。抽出対象、質問文、年齢軸、集計対象を分けて読むと、IPSSの37.9%や「約6割」をJFPA第9回・JSS2024と同じ指標として扱わずに済みます。
なぜ数字が違うのか
- 母集団が違う。 IPSSは妻の年齢条件がある夫婦調査、JFPA第9回は16–49歳の住民基本台帳からの無作為抽出、JSS2024は18–69歳のインターネット調査です。
- 時点と回答方法が違う。 IPSSは2021年6月、JFPA第9回は2023年9月、JSS2024は2023年11月に回答を集めました。JFPA第9回は郵送またはインターネット、JSS2024はインターネットで、同じ時点・方法とはみなしません。
- 測定が違う。 「性交」「セックス」「セクシャル・コンタクト」は、質問文と回答者の解釈が一致するとは限りません。
- 集計が違う。 年齢・初婚条件・追加出生予定の有無などの絞り込みで割合は変わります。
したがって、「日本ではセックスレスが○年で△倍になった」と書くには、同じ母集団・同じ質問・同じ集計条件の反復調査が必要です。異なる調査の値を並べる場合は、数値より先に条件を示します。
原典と確認メモ
- 一般社団法人日本性科学会「セックスレスについて」:定義と2024年更新
- 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」:調査概要と報告書一覧 / 報告書第Ⅱ部(図表8-1-1) / 第16回夫婦票 / グラフデータ / 公表集計結果表一覧
- 公益財団法人日本家族計画協会「第9回 男女の生活と意識に関する調査」:調査方法・対象 / 結果報告会・結果概要(現行公式ページ) / 旧公式ページ
- 公益財団法人日本家族計画協会「〖ジェクス〗ジャパン・セックス・サーベイ2024調査結果を発表」:調査方法と結果概要
選定方法:2026-08-15確認。定義は専門団体、母集団・抽出・質問時点・設問文・集計表の所在は、公的調査または調査実施主体の公式資料を優先しました。第9回調査は確認できた公式公開ページに詳細な設問票・年齢別クロス表がないため、結果概要の48.3%をそのまま記録し、IPSS・JSS2024・相模ゴム工業2026と再集計・統合していません。年齢別CSVや自己認識型調査の数値を再掲する場合も、分母と集計条件を添えて再確認します。